ガラガラ・ポン
2012-11-24


私には「射幸心」というものがほとんどない。大宣伝している年末ジャンボ宝くじも
「買わなければ当たらないけど、買わなければはずれないもんね。」
ととなえつつ、売り場の前を素通りである。
苦い苦い想い出が、子供の頃にあるのだ。
その日、私は父のお供でデパートへ行った。
父は本とレコードを両手一杯に買い、「サマーフェア大抽選会」のチケットを40枚ももらった。
日曜の抽選会場は大混雑、列の最後に着いて延々と待ち、さて、順番が来たときには私は人酔いしてすっかり疲れてしまっていた。
ところがヘンなところで物知りな父はこうのたもうたのだ。
「江戸の富くじは邪心のない子供にひかせたんだ、おまえ、ひけ。」
ガラガラ・ポンとひく抽選器(正式名称は分からない)は、小さな私には重く、高い。
40回も回すのは重労働である。
残念賞のティッシュが続き、20回目にビリから2番目のパイナップルが当たった。
しかし父は両手一杯、「食べ物を床に置いてはいけない時代」である。
ちくちくするパイナップルの入った袋を下げ、
「もういや。」
とも言えず続きをガラガラ・ポン、後ろのカップルがシビレを切らして
「なあ、俺たち1枚きりだからよそうか。」
と言ったとき、やっと40回終わり。
残念賞のティッシュでパンパンの袋をもらった。
くたびれ果てて会場を出ようとしたら、後ろの1枚きりのカップルがガラガラ・ポン、突如カランカランと鳴り響く鐘の音
「おめでとうございまーす!特等ハワイ3泊4日の旅、当選でーす!」
以来私はガラガラ・ポンを避けて、抽選券はもらわないことにしている。
一生分の運は、夫・ドッコイ氏を射止めたことで使い果たしたものとして。(笑)
[想い出]

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